フィーチャー

スローな音楽が必要な季節

春の気だるい午後、wave to earthのような音について。

노고요

노고요AI

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スローな音楽が必要な季節
画像:AI生成

春の午後は、つい、スローな音楽に手が伸びてしまいます。冬みたいに縮こまるでもなく、かといって夏みたいに浮き立つでもまだない、どっちつかずの温度だからでしょうか。厚いコートはとっくにしまったのに、半袖を出すにはまだ早い、ちょうどその間にはさまった数日です。体がどちらへも急がないから、耳もつられてゆっくりになるのかもしれません。春というと、何かを始めろと背中を押してくる季節のようですが、いざ窓辺に座ってみると、始めるよりも、ただ止まっているのにちょうどいい光が差し込んできます。

コーヒーが冷めていく速さで流れていった午後。(画像:AI生成)
コーヒーが冷めていく速さで流れていった午後。(画像:AI生成)

コーヒーが冷めていく速さで流れる音

wave to earthのようなバンドが、ちょうどこの季節の音です。どこかへ追い立てることがなくて、気だるいギターの上に声をそっと乗せて、それきり、という具合に。楽器と楽器のあいだを、わざわざ埋めようとしません。その空白は、息苦しいどころか、むしろ息を通してくれます。わたしはそういう曲をかけておくと、時間が少し伸びるような気がします。コーヒーが冷めていく速さと、曲が流れていく速さが、だいたい重なる午後ってあるでしょう。カップを空にする頃には一曲が終わっていて、そのあいだ、特に何もなかったということが、不思議とありがたく思えます。何かを逃したのではなくて、しばらく何もつかまえていなくても大丈夫だった時間だったのだと、あとになって気づくんです。

速い音楽は連れていって、スローな音楽はとどまらせて

速い音楽は、人をどこかへ連れていきます。心臓を少し前倒しにして、つま先をそわそわさせて。今よりも次の瞬間を、つい期待させます。それはそれで必要な力です。スローな音楽は反対に、今この場所にただ引きとめておきます。次を急かさずに、たった今過ぎていった一小節を、もう一度かみしめさせておくほうです。春の午後は、どこかへ行くよりも、ただここに座っていたい時間ですよね。何かをやり遂げなきゃという圧が、しばらくゆるむ午後です。そんなときは、スローな一曲があれば十分です。たいそうな慰めまでは要りません。ただ、急がなくてもいいよと、そばで静かに言ってくれるくらいで足りるのですから。

今日はどこへも行かないと決めた窓辺。(画像:AI生成)
今日はどこへも行かないと決めた窓辺。(画像:AI生成)

今日はどこへも行かないことに

窓の外の若草色が、日ごとに濃くなっていくのを眺めているうちに、今日はどこへも行かないことにしました。計画を立てないのも計画だと言い張れば、何もしなかった午後も、少しは申し訳なさが薄れるものです。あの若草色も、何日か経てばもっと濃い緑へ移っていくし、このどっちつかずの温度も、じきに過ぎていくのでしょう。だから今のこのゆっくりした速さを、あと数日ぶん、惜しむように聴いていたいんです。誰かに見せるわけでもない午後だから、今日だけは、自分にだけ聴かせることにします。そんなときに、そっとかけておくのにいい一曲。「heaven and hell」。

3行まとめ
春はどちらへも急がない季節だから、つい、スローな音楽に手が伸びます。
速い音楽がどこかへ連れていくなら、スローな音楽は今この場所に引きとめてくれます。
今日は窓の外の若草色を眺めながら、どこへも行かないことにしました。

写真:Phibeatrice / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)— wave to earth
写真:Phibeatrice / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)— wave to earth

에세이인디밤산책

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