数字のうしろに残る歌たち
上半期4,950万枚という記録が語らないことについて。

上半期にK-POPのアルバムが4,950万枚売れたそうです。史上最高なんだとか。数字だけ見ると途方もないのですが、わたしはその数字をしばらく眺めているうちに、つい別のことを考えてしまいました。
4,950万という合計
4,950万枚というのは、つまるところ4,950万回の「買った」なのです。ある人は好きなメンバーのフォトカード一枚のために、ある人は歌詞カードの紙のにおいのために、またある人はただこの季節を残しておきたくて、一枚を手に取ったのでしょう。記録はぜんぶを足し合わせた数ですが、そのなかにある気持ちは、一枚一枚ばらばらなのです。
数字が大きくなるほど、そのなかの顔はかえって見えにくくなります。4,950万という言葉があまりに大きいので、レジの前で財布を開けようか迷った手や、宅配の箱を開けるときのそっとした指先のようなものは、その大きな数字のなかでただ四捨五入されて消えてしまうのです。わたしは、その四捨五入される直前の場所、小数点の下でほんの少しためらっていたであろう瞬間が、しきりに気になってしまいます。

残しておきたいという、古い気持ち
音源が指先で何度かタップすれば終わる時代に、わざわざ実物を買って本棚に挿しておく気持ちは、いったい何なのでしょう。たぶん「残しておきたい」という、かなり古い感情なのでしょうね。好きな歌が、データではなく物として、そばにあってほしいという気持ちです。
ストリーミングは便利ですが、手には掴めません。プレイリストはある日、音もなく消えてしまうこともあって、わたしたちもそれをうっすらと知っています。だからある種の気持ちは、あえて重さを求めるのかもしれません。アルバム一枚の厚み、ジャケットの光沢、ケースを開け閉めするときのカチッという音。それは歌を聴くことというより、歌をそばに置くことに近いのです。昔の人が手紙を箱にためておいたのと、そう大きくは違わないのでしょう。
物になった歌は、わたしと一緒に歳をとります。ジャケットの角が少しずつすり減り、手の跡がついて、やがてそのアルバムは、あの季節のわたしをつかまえておく物になるのです。何年か後に本棚からその一枚をまた取り出すと、歌よりも先に、あのときの部屋の空気がふっと押し寄せてくることもあります。実物を買うというのは、もしかしたら今のわたしを、何年か後のわたしへ送っておくことなのかもしれません。4,950万枚のなかには、そんな手紙が数えきれないほど混じっているはずです。
夜の散歩、今日挿された一枚
だから記録が更新されたという知らせを聞くたびに、わたしはランキングよりも、その後ろに隠れた一枚一枚のほうを想像します。今日、だれかの部屋の本棚に新しく挿されたであろう、その一枚を。
夜に歩いていると、明かりのついた窓が見えますよね。あの窓のどこかには、今日買ったアルバムを初めて開けている人がいるはずです。ジャケットをしばらく見つめて、フォトカードをどこに立てておこうか迷って、けっきょく好きなトラックを一つ、小さくかけておく夜。ランキングにはぜったいに書かれない場面です。でも4,950万という数字をほんとうに満たしているのは、たぶんそんな夜たちなのでしょう。わたしは、その一枚一枚が、数字が忘れられたずっと後まで、長く愛されてほしいと思います。歌はけっきょく、ランキングではなく、だれかの部屋のなかに残るものだから。
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参照した記事
- 1.[Korea JoongAng Daily] K-pop album sales hit record 49.5 million in first half of 2026 ↗

NONOL 編集部
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